特色ある研究活動の成果
Research

電力を無線で送る -高周波無線電力伝送の基礎技術の確立と応用設計

電力を無線で送る -高周波無線電力伝送の基礎技術の確立と応用設計

研究代表者
関屋 大雄
共同研究者
①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
② フリガナ:グエン キエン、③ ローマ字表記:Kien Nguyen、④ 所属部局名:大学院工学研究院(工学部情報工学コース)、⑤ 職名:助教、⑥ 専門分野:通信工学

関屋 大雄教授

関屋 大雄

Sekiya Hiroo

大学院工学研究院 教授

専門分野:パワーエレクトロニクス、無線通信方式、非線形問題

2001年慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程修了。同年千葉大学大学院自然科学研究科に助手として着任。2016年より現職。途中、Wright State University(米国オハイオ州)訪問研究員(2008-2010)。湘潭大学(中国湖南省) Honored Professor、長崎総合科学大学客員教授。
IEEE(米国電気電子学会)回路とシステムソサイエティ理事(2020-)、IET(英国工学技術会)Circuits, Systems, and Devices地域編集委員(2016-)、IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power Electronics編集委員(2019-)、電子情報通信学会Communication Express編集委員長(2018-2020)、IEEE Trans. Circuits and Systems-I 編集委員(2018-2020)、2018International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applications実行委員長等を歴任。
2008年船井学術奨励賞、安藤博記念学術奨励賞、エリクソンヤングサイエンティストアワード、2013年千葉大学先進科学賞、2020年電子情報通信学会論文賞等を受賞。

どのような研究内容か?

 スマートフォンの登場は、我々の社会全体に大きな変革をもたらしました。これはいつでもどこでもインターネットにつなげられるようになった、通信の「無線化」に端を発します。無線化のインパクトは高く、思い返せば身の回りの多くの電子機器が無線化されていくことに気づくと思います。そのような中で、最後まで残された「有線」が電気を送る電線だといわれています。もし、煩わしさなく「いつでもどこでも簡単に」電力を得られるようになれば、携帯電話の登場と同様の社会的インパクトを与えるかもしれません。
 我々は、電力を無線で送る「無線電力伝送」に関する研究開発を行っています。図1にあるように、無線電力伝送にはいくつかの方式がありますが、私はこの中でコイルを用いる「電磁誘導方式」「磁界共鳴方式」を中心に研究を進めています。電力を無線で送るには交流電流(正弦波状の波)を作る必要があります。この交流電流の周波数(1秒間あたりの波の数)を高くすることを主たる研究課題としています。

何の役に立つ研究なのか?

 現在、世界中で図2にあるようないろいろな無線電力伝送システムが検討されています。この図から無線電力伝送が夢を持った技術であることを感じていただけると思います。(a)はいわゆる「置くだけ充電」です。(b)は電気自動車向け充電システムで、送電機を地中に埋め込みそこに駐車すれば勝手に充電を完了します。(c)のように近い将来家からコンセントがなくなり、無線で給電できる環境が整うかもしれません。(d)は走行中の車に給電しようとするものです。走りながら常に充電できるので、将来充電スタンドさえいらなくなるかもしれません。(4)では宇宙で太陽光発電を行い、そのエネルギーを地球へ送ろうとしています。
 実は無線電力伝送の概念は120年以上前に遡ることができ、エジソンのライバルといわれる二コラ・テスラによる「地球システム」にその原型をみることができます。最新のテクノロジを駆使して長年夢見てきた技術の実現に一歩一歩向かっていく。そのことを実感しながら研究を進められるところに本研究の面白さがあります。

今後の計画は?

 我々は情報の立場から研究に取り組むことにより、独自の設計ツールを開発しました[2]。これら独自の技術を駆使することで、我々にしか解けない研究課題に積極的に取り組み、誰もが必要とする基礎技術を確立していきたいと考えています[4]。また、具体的応用例として図3のようなロボットアーム向け無線電力伝送システムを開発する予定です。

関連ウェブサイトへのリンクURL

研究室URL:
http://www.s-lab.nd.chiba-u.jp/

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

[1]関屋大雄, "無線電力伝送システムとその動向," 電子情報通信学会誌 vol.101, no.4, 2018 pp.382-386
[2]「千葉大学関屋研究室:E級を高周波コンバータの本命に、設計アルゴリズム確立し開発短期化」日経エレクトロニクス 2017年9月号, pp. 48, 49.
[3] J. Ma, Asiya, X. Wei, K. Nguyen, and H. Sekiya, "Analysis and Design of Generalized Class-E/F2 and Class-E/F3 Inverters," IEEE Access, vol.8, pp.61277-61288, Mar. 2020.
[4] H. Sekiya, N. Shinohara(ed.), Wireless Power Transfer: Theory, technology, and applications, Chapter 6-Inverter/rectifier technologies on WPT systems, IET, pp.83-112, 2018.

この研究の「強み」は?

 この分野において、ソフトウェアとハードウェアを同時並行的に開発できる研究機関はほとんどありません。シミュレータ開発(電子情報)、最適化プログラムの実装(情報)、回路の実装実験(電気電子)などをすべて自前で行える点が我々の強みです。この独自の研究アプローチが独創的な研究成果につながります。

学生や若手研究者へのメッセージ

 私は10年以上、ほとんど研究成果が注目されず、ときには否定されるような時期を過ごしました。しかし、我が道を信じ、徹底的に技術を突き詰めていきました。その磨き続けた技術が今日の無線電力伝送研究の技術基盤となっています。
 みなさんには、いろいろなことに興味を持ち、新しいことに貪欲に挑戦してもらいたいです。そして、周りの評価にぶれることなく我が道を突き進む「芯」をもって、興味をもったことに没頭してほしいと思います。

無線電力伝送の伝送方式 ([1] copyright(c)2018 IEICE)

図1:無線電力伝送の伝送方式 ([1] copyright(c)2018 IEICE)

無線電力伝送で現在検討されているアプリケーション ([1] copyright(c)2018 IEICE)

図2:無線電力伝送で現在検討されているアプリケーション ([1] copyright(c)2018 IEICE)

ロボットアーム向け無線電力伝送の開発

図3:ロボットアーム向け無線電力伝送の開発

実験の様子

図4:実験の様子

実験回路とその波形

図5:実験回路とその波形