テラヘルツ波とスピン振動の高効率な結合による巨大スピン応答の観測―超高速スピントロニクス応用への期待―

2023年04月03日

研究・産学連携

京都大学化学研究所の廣理英基 准教授、金光義彦 教授、章振亜 博士後期課程学生、森山貴広 准教授、関口文哉 特定助教、同大工学研究科の向井佑 特定助教、陰山洋 教授、同大理学研究科の田中耕一郎 教授、東京大学大学院総合文化研究科の古谷峻介 特任研究員、千葉大学大学院理学研究院の佐藤正寛 教授、東京工業大学理学院の佐藤琢哉 教授、同大科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の山本隆文 准教授らの研究グループは、入射するテラヘルツ磁場強度を物質内部で約200倍増強させる技術を開発し、スピンを大振幅で励起し、スピン運動の非線形性の観測に成功しました。
近年、次世代コンピューティングや情報処理技術の候補として、従来の電子デバイスで用いられる電子に加えスピンを情報担体とする手法が検討されています。このため、物質中のスピンの運動を光によって効率的に励起・制御する方法やそのスピン運動の理解が重要な課題になっています。特に、テラヘルツ周波数帯で高速に振動するスピンを持つ反強磁性体は高速なデバイス動作において有望であると考えられ、テラヘルツ波励起によるスピン制御が求められていました。本研究では、螺旋状の金属メタマテリアル構造を反強磁性体HoFeO3に作製し、試料中に最大で2テスラのテラヘルツ磁場を発生させ、巨大なスピン振動による非線形な応答を観測しました。今回開発した高効率にテラヘルツ波を捕集し巨大な磁化変化を誘起する方法は、スピンダイナミクスの理解を深め、超高速な磁化スイッチ、テラヘルツ波/スピン変換機など、超高速スピントロニクス技術へ応用されることが期待されます。
本研究成果は、2023年3月31日(現地時刻10時)に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。

  • テラヘルツ磁場パルスによるスピン振動の励起により、スピン振動の非線形な周波数成分(第二高調波成分(青色)、第三高調波成分(紫色))が生じる様子を示す概念図。〔京都大学プレスリリースより引用〕

本研究成果の詳細は京都大学化学研究所ウェブサイト(https://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/sites/topics/230331/)をご覧ください。