免疫の要、T細胞が生まれる“最初のスイッチ”を解明
~Notchシグナルが免疫細胞の運命を切り替える仕組みを発見~

2025年12月23日

研究・産学連携

 千葉大学大学院医学研究院の田中 知明教授、東海大学医学部基礎医学系生体防御学の細川 裕之准教授らの研究グループは、細胞間コミュニケーションを担う重要なシグナル伝達経路の一つである、Notchシグナルが「RUNX」と呼ばれる転写因子注1)の働き方と結合先を大きく作り替えることで、「T細胞になる」ための分化注2)プログラム(T細胞系譜プログラム)を起動していることを明らかにしました。本研究成果は、T細胞性白血病や免疫不全症の理解、さらには効率的なT細胞製造技術の開発につながることが期待されます。 
 本研究成果は、2025年12月4日に国際科学誌Journal of Experimental Medicineでオンライン公開されました。

■用語解説
注1)転写因子:遺伝子のスイッチをオン・オフして、どの遺伝子をどれだけ働かせるかを調節するタンパク質。細胞の分化や機能の決定に重要な役割を担う。
注2)分化(ぶんか):細胞が、未熟な状態から特定の働きをもつ細胞へと変化していく過程のこと。T細胞分化とは、T細胞としての性質を獲得していく過程を指す。

■論文情報
タイトル:Notch interaction with RUNX factors regulates initiation of the T-lineage program
著者:Yuichi Kama, Ken-ichi Hirano, Kaori Masuhara, Yusuke Endo, Yuka Suzuki, Masanori Fujimoto, Tatsuma Matsuda, Takashi Yahata, Masahiko Kato, Katsuto Hozumi, Tomoaki Tanaka, Hiroyuki Hosokawa
雑誌名:Journal of Experimental Medicine
DOI10.1084/jem.20250911

  • 図1:一細胞解析で解明したRUNX1のT細胞分化での役割

    図1:一細胞解析で解明したRUNX1のT細胞分化での役割