⾎⼩板製造の規模拡⼤を実現する新たな培養装置の検討と設計
2024年06月18日
研究・産学連携
岡本陽⼰ 研究員(京都⼤学CiRA臨床応⽤研究部⾨)、藤尾康祐 研究員(⼤塚製薬株式会社)、中村壮 講師(CiRA同部⾨)、江藤浩之 教授(CiRA同部⾨、千葉⼤学⼤学院医学研究院)らのグループは、佐⽵マルチミクス株式会社、⼤塚製薬株式会社、澤⼝朗 教授(宮崎⼤学医学部)との共同研究により、臨床レベルの⾎⼩板を⼤量に製造できる従来の8L容量の培養装置を45L容量まで⼤型化するための検証を⾏い、⼤型化しても⾼効率な⾎⼩板製造が期待できる培養装置の構造を新たに設計しました。
ヒトiPS細胞を⽤いて⽣体外で⾎⼩板を製造する技術は、献⾎のドナーに依存しないため、⾎⼩板輸⾎の安定的な供給に貢献することが期待されています。研究グループではこれまでに、体外での⾎⼩板製造に有⽤な巨核球(注1)をヒトiPS細胞から作製する⼿法と、⽣体内を模倣した流体制御により巨核球から⾎⼩板を製造できる⼤容量の培養装置を開発し、同技術を⾎⼩板減少症の患者さんへの⾎⼩板輸⾎の臨床試験へと導出しました。
体外での⾎⼩板製造の実⽤化に向けて、均質な臨床レベルの⾎⼩板をさらに効率よく低コストで製造する技術開発のため、今回、研究グループは培養装置の⼤型化に取り組みました。培養装置を45L容量に⼤型化すると、従来に⽐べて⾎⼩板の作製効率や品質が低下することがわかりました。その原因として、従来の2枚の円板(ブレード)による撹拌機の構造では、⾎⼩板の作製に必要な乱流などの流体制御の及ばないスペースが増えてしまうことが明らかになりました。そこで、ブレードを増やした構成の流体制御シミュレーションを改めて⾏い、3枚ブレード構成かつ45L容量の培養槽で乱流を効率よく発⽣させることのできる新たな培養装置を設計しました。
本研究により体外での⾎⼩板製造の実⽤化に向けた開発が可能になるとともに、今後は新たに設計した培養装置を⽤いたさらなる検証を進めていく予定です。本研究による知⾒が、⾎⼩板をはじめとした細胞の⼤量培養を実現し、産業化を加速させる技術につながることが期待されます。
この研究成果は、2024年6⽉17⽇(⽉)に、国際学術誌Communications Engineering に掲載されました。
(注1)巨核球
造⾎幹細胞から作られる細胞で、⾎⼩板を⽣み出す細胞。巨核球は成熟すると核分裂はするが細胞分裂はしないという特殊な分裂を⾏い、⼤型で多核の細胞になる。