がんの転移を調節するタンパク質Mdm2と新たな仕組みを発見
~がんの新たな治療薬の開発につながる可能性~

2024年09月25日

研究・産学連携

 千葉大学大学院医学研究院の田中知明教授とコロンビア大学のCarol Prives教授の国際共同研究チームは、がんの転移に働く遺伝子発現の新しいメカニズムを解明しました。がん抑制遺伝子産物p53を抑制することが知られているタンパク質であるMdm2が、p53との関係とは独立して、Sprouty4注1)の制御を介してがん細胞の遊走注2)や浸潤、接着斑注3)の形成を促進し、がんの浸潤や転移を促進するメカニズムを明らかにしました。このように、がんの転移に関わる因子の解析が進むことで、がんの新たな治療法の開発が期待できます。

 本成果は、英国科学誌Nature Communicationsに2024年8月20日に掲載されました。

■用語解説
注1)Sprouty4:さまざまなシグナル伝達経路を調節する役割を果たすタンパク質。細胞の異常な増殖や分化を防ぐ重要な役割を持ち、これまでがん細胞の遊走を抑えることは報告されていたが、Mdm2との関わりは報告がなかった。

注2)細胞遊走:細胞が生体内のある場所から別の場所に移動すること。がん細胞の遊走により、移動した臓器や組織で増殖するとがんの浸潤や転移につながる。

注3)接着斑:細胞と細胞外基質が接着する場所。細胞の細胞外基質への接着は、主としてFocal adhesionと呼ばれる細胞表面の特定の構造で起きていて、細胞内の細胞骨格タンパクが細胞表面のセンサー分子、インテグリンを介して細胞外基質と連結する。

  • 図1