不整脈誘発薬剤との結合状態を解明
-副作用原因タンパク質hERGチャネルの構造が安全な薬設計を導く-

2024年09月30日

研究・産学連携

 千葉大学大学院理学研究院(膜タンパク質研究センター、分子キラリティー研究センター兼任)の村田武士教授、大学院医学研究院の斎藤哲一郎教授、大学院医学薬学府博士後期課程2年の宮下靖臣らは、オックスフォード大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所との共同研究により、薬剤の副作用によって引き起こされる薬剤誘発性心突然死の原因タンパク質であるhERGチャネル(注1)と副作用誘発薬剤の結合モデルを、クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)(注2)を用いて明らかにすることに成功しました。
 本研究成果は、hERGチャネルと薬剤の結合情報に基づいて薬剤の設計や改変を可能にし、より安全な新薬を迅速に市場に送り出すための重要な手がかりとなることが期待されます。
 本論文は、2024年9月24日に米国科学誌Structureにオンラインで掲載されました。

注1)hERG (human ether-à-go-go related gene) チャネル:主に心臓の細胞膜に存在する電位依存性カリウムチャネルの一種。心臓のリズムを整えるために重要な役割を果たしており、機能異常により、心臓のリズムが乱れ、重篤な不整脈を引き起こす可能性がある。また、一部の薬剤がこのチャネルを誤って遮断することで、副作用として致命的な心臓のリズム異常を引き起こすことがある。
注2)クライオ電子顕微鏡 (Cryo-EM): 極低温で急速に凍らせたタンパク質試料を極低温状態に保ったまま電子線写真を撮影することのできる透過型顕微鏡。

  • 図2 hERGの薬剤結合における共通点