発電できる有機EL素子の開発に成功~自立駆動型ディスプレイなど次世代の統合型アプリケーションへの道を拓く
2026年01月21日
研究・産学連携
千葉大学先進科学センターの深川弘彦 特任教授、NHK放送技術研究所、京都大学大学院理学研究科の畠山琢次 教授ら共同研究チームは、一つの素子で「発光」と「太陽光発電」の機能を併せ持つ「発電できる有機EL素子注1)」の開発に成功しました。これまで、有機半導体注2)を用いたデバイスにおいて、発光と発電は逆過程であるため、これらを高い次元で両立することは困難とされていました。本研究では、高い発光効率と強い光吸収を併せ持つMR-TADF材料注3)を用い、素子内部のエネルギーを精密に制御することで、発光・発電効率のトレードオフを克服しました(図1)。さらに、青色から赤色、白色までの全可視光領域での動作を実現しました。この成果により、ディスプレイの消費電力削減や、外部電源を必要としないセンサー・情報セキュリティデバイスなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、2026年1月20日に、国際学術誌Nature Communicationsで公開されました。
■用語解説
注1)有機EL素子:薄くて柔軟な有機半導体を使い、電流で発光するディスプレイ技術。バックライト不要で自己発光し、高い色再現性と反応速度がある。主にディスプレイに利用され、薄型で鮮やかな表示が可能。
注2)有機半導体:電気が流れる有機物。1940 年代に発見され、1997年に有機半導体を使った初の有機 EL 素子が実用化し、高性能ディスプレイとして普及している。今後、さらに発展が期待される次世代半導体。
注3)MR-TADF材料:多重共鳴(MR)構造により、濁りの少ない純度の高い光、特に青色を効率よく発光できる新型の有機発光材料。熱活性化遅延蛍光(TADF)材料により、本来は発光に寄与できない状態のエネルギーを熱で再利用し、高い発光効率を実現。分子の骨格が剛直で色純度が高い発光を示すため、次世代の発光材料として注目されている。
■論文情報
タイトル:A pathway to coexistence of electroluminescence and photovoltaic conversion in organic devices
著者:Taku Oono, Yusuke Aoki, Tsubasa Sasaki, Haruto Shoji, Takuya Okada, Takahisa Shimizu, Takuji Hatakeyama, Hirohiko Fukagawa
雑誌名:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-025-67332-0
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図1:MR-TADF材料の例と多機能素子の模式図。ドナーとアクセプターとの界面で生成される励起子のエネルギーや挙動を制御し、高性能化につなげた。