令和7年度千葉大学卒業式、大学院修了式・学位記授与式 答辞

  • 修了生答辞

本日、私たち卒業生、修了生のために、このような式典を開催していただき、誠にありがとうございます。また、この多忙な中、ご出席くださいました、横手学長をはじめ、諸先生方ならびに職員の皆様に、卒業生・修了生一同、心より御礼申し上げます。

千葉大学において博士号を取得し、この場に立てますことを大変嬉しく、また感慨深く感じております。振り返れば十年間、私は千葉大学に在学し、学部・博士前期課程では建築学を、博士後期課程ではランドスケープ学を専攻し、それぞれの学問を通じて地方の活性化に深い関心を抱き続けてまいりました。

私が地方の活性化を志すようになったのは、高校時代、故郷の福岡県久留米市の商店街の衰退や、幼少期に過ごした熊本県旧植木町の田園風景の変化を目の当たりにし、地域の未来に危機感を抱いたことがきっかけでした。そこで大学の進学先を探す中で、幅広い学部を有する総合大学であり、地方創生に積極的に取り組む千葉大学に強く惹かれたことを覚えています。

学部時代には千葉大学が取り組む「ツインクル」プロジェクトに参加しました。教育学部と理系の学生が協働で授業を開発し、ベトナムの中高生に出前授業を行いました。博士前期課程では、千葉大学が取り組む「地の拠点整備事業(COC事業)」に関する実践活動に参加し、千葉県の郊外や農山漁村地域の現場を学びました。そして博士後期課程では、ランドスケープ学という新しい学問に飛び込みました。学部や博士前期課程時代に培った、現場に出て学ぶ姿勢をさらに発展させ、臆することなく、自ら農村や被災地を訪ね、歩くことが日常となっていきました。さらに、2023年からは、千葉大学の国際高等研究基幹において、指導教員の秋田典子教授主導のプロジェクトに技術補佐員として参画し、オランダやフランスの研究者との国際シンポジウムや、インドネシアでの現地調査など、国際的な活動をアクティブに行うことができました。国際的な研究活動は文化や食事、気候の違いに加え、先生方の体力や気力の限界が垣間見える場面もありましたが、互いに励まし合いながら取り組むことで、なんとか対応し、長期的なプロジェクトをやり遂げることができました。その経験は、私自身の強みを確認するとともに、今後国際活動に励む自信がつきました。

そうした経験を基盤に、博士論文に取り組んできました。博士論文では、ランドスケープ学の、生物・生態系や風景の歴史といった、土地と人の関係性を理解する視座を踏まえつつ、建築学の視点を融合させ、具体的には千葉県南房総市を調査し、農山漁村地域を有する自治体における拠点形成と持続可能なまちづくりの可能性を考察しました。このような多角的かつ学際的な研究を推進できましたのは、千葉大学が多様な学際的環境を備え、地域社会や国際社会と連携しながら、学びを深められる場であったからこそです。その恵まれた環境が、私の人生を豊かにし、博士論文の完成へと導いてくれました。

十年間という長きにわたり、心地よい千葉大学の環境で学び続けられたことは、私にとって何よりの幸運です。居心地の良さに、このままずっと学生を続けたいと思ったこともありますが、今日こうして修了を迎え、いよいよ千葉大学の巣から飛び立たねばならないことに、少し寂しさを感じております。

最後になりますが、これまでご指導くださいました先生方、大学生活を支援してくださった職員の皆様、研究や実践活動を共に取り組んだ研究室の皆様、学びの場を提供してくださった地域の皆様、そして福岡や熊本の地から見守ってくれた家族に、心から感謝申し上げます。皆様のご支援とご理解無くして、私の成長はあり得ませんでした。

今後私たちは、千葉大学で培った学びと誇りを胸に、社会に貢献できる人間となるべく努力してまいります。皆様のご健勝とご多幸、そして千葉大学のさらなる発展を心よりご祈念いたしまして、私の答辞とさせていただきます。

 

令和7年9月26日

令和7年度卒業生・修了生代表

大学院園芸学研究科環境園芸学専攻ランドスケープ学コース
三栗野鈴菜