ニュース・イベント情報
Topics

大学院入学式 学長告辞

掲載日:2017/04/06

  千葉大学大学院に入学された皆さん、入学おめでとうございます。向学心、研究心にあふれる皆さんを国内のみならず、世界各国から迎えられたことを、大きな喜びとしております。教職員一同とともに、皆さんの目標達成に協働できることを楽しみにしています。また、ご家族の方々のご臨席に心より感謝申し上げますとともに、入学された方々の学問への旅立ちを温かく見守ってくださるようお願い申し上げます。

  大学院に入学された皆さんには、これまで受けてきた高等教育の集大成として、学術の理論及び応用を研究し、高度の研究能力や専門学識を究め、専門性の高い職業を担うための卓越した能力を培っていただきたいと思います。特に、大学院における教育研究活動のなかで培っていただきたい能力として、私が第一に挙げたいことは、研究活動を通して創造的に考える能力である「知性」を磨いてほしいことです。この「知性」は、大学院での課題解決に向けた研究や新たな発見を求めて行う研究の過程で磨かれるからです。難しい研究課題の解明に向けて、これまで培ってきた「知能」を最大限に駆使して、研究活動を続ける中から、ご自身の知性を磨き、深めていってください。そして将来は、大学院での研究活動で培った知性を基に、社会のリーダーとして皆さんの描いた夢を実現してほしいと願っています。

  皆さんがこれから始める研究には、その内容から大きく基礎研究と応用研究とに分けられます。基礎研究は、基本原理の理解を向上させるために進める研究であり、特別な応用や用途を考慮することなく、新しい知識を得るために行われる知的活動です。その研究成果は、私たちの知的好奇心を満足させてくれるだけではなく、文化の創成や応用研究へのシーズとなります。応用研究は、基礎研究の成果の実用化を追求する研究や特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究などで、その成果が直接的に私たちの生活に役立つ知的活動です。どちらも人類の幸福と発展のためには不可欠な知的活動です。しかし現在では、応用研究、中でも産業や経済の活性化に直接結び付くような研究が重視される傾向にあります。

  このような時代の要請から応用研究が盛んになると、成果によっては大きな利益に結び付くことから、データのねつ造や改ざんなどの倫理違反が見られるようになりました。そこで文部科学省は、研究活動における基本的な倫理基準に関する指針を示し、千葉大学もその指針に沿った研究者の行動規範を規定しています。これから大学院で研究活動を始められる皆さんには、改めて「社会規範」とともに「千葉大学における研究者の行動規範」を遵守していただきますよう、強く望みます。

  私は、研究活動の内容と成果は、研究者の人格の表れであると思っています。研究課題の解明に向けて、どのように研究を進めていくか、得られた研究成果をどのように論文にまとめていくかという過程において、その研究者の人格が表れてきます。そして、人格的に優れた研究者のみが、生涯にわたり研究活動を続けていくことが出来ると思っています。研究者にとって、常に素晴らしいデータを出し続けることは不可能です。データの出ない時期に如何に研究活動を継続していくかという点に、その研究者の人格が強く反映されます。ですから研究者にとっては、素晴らしい研究成果を挙げることも重要ですが、それ以上に自らの人格の修養に努めることが大切だと思っています。

  そこで、これから大学院で研究活動を始められる皆さんには、素晴らしい研究成果を挙げるための努力とともに、人格面でも修養に努めてほしいと思います。そのためには、指導を受ける先生方から、技術的な面ばかりでなく、研究者としての人間性や研究課題に対する哲学的な面での指導も受けるようにしていただきたいと思います。更にそのような指導者を、教授陣ばかりでなく共同研究者や海外の研究者などからも積極的に探し求めてください。この点は、専門職学位課程の皆さんにとっても同様です。素晴らしい指導者から受ける薫陶は、皆さんの人格形成に大きな影響を与えることとなり、皆さんの人生における宝物となることでしょう。

  また大学院では、異分野における科学技術の革新にも積極的に注意を払うようにしてください。その理由は、あらゆる分野の研究が科学技術の進歩に支えられて発展してきているからです。私が専門としてきた免疫学を例に挙げてみますと、今から200年前のジェンナーによる種痘法の発見から今日に至るまでに、科学技術として顕微鏡、遺伝子操作技術、そして胚工学技術が、免疫学の発展に大きく影響してきました。顕微鏡を使うことにより抗原としての微生物の存在が明らかになりました。その微生物と反応する免疫物質としての抗体が遺伝子操作技術を使って遺伝子のレベルで明らかにされました。結果として、目的に合った抗体を培養細胞から作り出すことができるようになり、抗体医薬品として現在の最先端医療を支えています。さらに、胚工学技術と遺伝子操作技術を併用することにより、免疫機能を生体レベルで解析することが可能となり、ワクチンの改良やがんの免疫療法などの研究が飛躍的に発展してきています。

  そのような科学技術の革新に関して、最近私が注目しているのは、人工知能・AIの著しい進化です。インターネットの普及とコンピュータの高速化により膨大な電子データを短時間で集積できるようになったことや、デープラーニング法が開発されたことなどにより、AIの進化が加速度的に速まっています。そのため近い将来、AIに取って代わられる学問分野や職業なども話題になり始めています。同時に、このようなAIの進化を様々な研究分野でも積極的に取り入れていかなければならない時期が来ていると思います。皆さんがこれから始められる研究分野においても、進化したAIを取り入れた新たな研究展開が必須となることでしょう。

  皆さんには、これから大学院で学術の理論、高度の専門学識を究めていただき、将来は、研究者や実務家としてグローバル化社会の第一線でリーダーとして活躍されることを願っています。そのためには、「つねに、より高きものをめざして」、真摯な探究心、研究心を持ち続けるとともに、研究活動を通して創造的に考える能力である「知性」を磨き、素晴らしい指導者から多くの薫陶を受けることにより、ご自身の人格の修養に努めてください。これからの皆さんの大学院における研究活動が、実り多きものとなることを心から願って、告辞といたします。

平成29年4月5日
千葉大学長 徳久剛史